ベアフット協会裸足で自由に遊べる浜辺を子どもたちに
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ベアフット協会の沿革



【はじめの一歩】

真夏には20万人の人出で賑わった湘南。70年代半ばからは、大量のゴミが溢れ、水質汚染により湘南の海岸は無惨な姿に変わってしまった。冷蔵庫、タイヤ、自転車、缶、ビン、ビニール等が散乱していた。高度経済成長がもたらしたプラスティック製品は、海岸ゴミとして年々増え続けていた。  
湘南を代表するミュージシャン、ブレッド&バター通称ブレバタの岩澤幸矢は、湘南茅ヶ崎海岸で育った。彼が子どもの頃に遊んだ海、夜光虫の輝く海はもうなかった。
その頃長女が誕生する。
「この子は海で遊べるのだろうか?」
「この子のために何かを始めなくてはいけない・・・」
「きれいな海を子どもたちへ残したい!」
そんな父親の想いから、幸矢はビーチクリーンアップ(海岸清掃)を始めた。


【きれいな海を子どもたちへ】

1981年5月1日、辻堂海岸で最初のベアフットコンサートが行われる。コンサートテーマは「はだしで歩けるきれいな海を子どもたちへ・・・」。
当時「ビーチクリーンアップ」という言葉の認知度はまだまだ低かった。「コンサートをするよ!」と人々に呼びかけた。ムッシュかまやつ、鳥山雄司、美久月千春、宮手健夫といった、ブレバタゆかりのミュージシャンたちが手を挙げる。
ビーチクリーンアップとコンサートを合わせたことで少しずつ人々が集まって来た。集まった人々とミュージシャンは、黒いビニール袋を持って海岸へクリーンアップに出かけた。あまりのゴミの多さに驚く。行政対応も無かった時代だった。クリーンアップの後はコンサートだ。ミュージシャンも参加者も、はだしになって音楽を楽しみ、海岸保護の重要性を認識した夜となった。  
「はだしで歩けるきれいな海を子どもたちへ・・・」  
はだしを意味する『ベアフット Barefoot』の活動が始まった。


【あなたの流した汗、拾ったゴミが入場券!】

90年代になると、人々だけでなく行政の意識も変わってきた。90年に開催された「サーフ‘90渚のシンポジウム」にパネラーとして参加した幸矢は、ベアフットコンサートの構想を提案する。これに呼応した行政と有志の手によって実行委員会が結成され、1991年茅ヶ崎海岸でベアフットコンサートが始まった。
「あなたの流した汗、拾ったゴミが入場券」となって開催されるベアフットコンサートは、参加者全員で行うクリーンアップと無料コンサート。茅ヶ崎海岸の夏の恒例イベントとなった。華やかな90年代の恩恵を受けベアフットコンサートは、ビーチイベントとして開催されていった。  
噂を聞きつけた各地の青年会議所や行政から協力要請が始まる。ベアフットの活動は各地へ広がった。一人の父親の願いは、大勢の親の願いと重なった。


【ベアフット協会設立】

京都府丹後市網野町琴引浜沖で、ロシア船舶ナホトカ号の重油流出事故が起きた。琴引浜の砂は「鳴き砂」。はだしで歩くとキュッキュッと白い砂が鳴く。そこに真っ黒の重油が流れ着いていた。幸矢は湘南を飛び出した。重油撤去のボランティアに参加したことで琴引浜の人々と繋がった。  
琴引浜では「はだしのコンサート」が始まっていた。続いて、島根県益田市からもベアフットコンサート開催の手が挙がる。開催地が増えると、諸問題が出てくる。環境保護啓発イベントとして開催したい地元実行委員会。ビーチイベントを開催したいイベントスタッフ。幸矢の苦悩が始まる。環境保護の意識を共有するスタッフを探すのだ。  
しかし、時代は環境保護へ向かっていた。賛同するスタッフにようやく巡り会った。各地の実行委員会からの熱い要請を糧に、幸矢はついに決意する。 情報の共有と発信を目的に、1999年6月ベアフット協会設立。


【Sing-A-thon(シンガソン)】

2001年8月14日、鵠沼海岸(藤沢市)。「ベアフットくげぬま01」のステージに、幸矢の娘Aisaがミュージシャンとして出演した。奇しくも彼女の二十歳の誕生日。地元の仲間たちからの祝福の中、幸矢はベアフット誕生の由来をステージ上で初めて話した。Aisaは、自分が聴覚障害の可能性を持って生まれた事を知った。  
Aisaは、学生仲間を集めて「Ripple(リップル~波紋)」を結成する。自分を育ててくれた海に、今度はお返しする時だと思った。ベアフット協会に次世代の力が加わった。Rippleは、全国の中・高・大学生たちと一緒にビーチクリーンアップを行った。  
海岸は世界の入り口だ。日本の太平洋側のゴミは、海流に乗ってアメリカのハワイ州、カルフォルニア州へ流れ着く。韓国、中国のゴミは、日本海側へ漂着する。日本の海岸線は33、889km。これは地球一周に匹敵する長さだ。海岸をきれいにするには、ひとつの地域だけで考え、行動しても駄目だと気が付いた。賛同するスタッフ、Rippleと共に日本縦断が始まった。
Sing-A-thon33889~はだしの音楽隊日本縦断~。


【花に願いを 歌に想いを】

ビーチクリーンアップを20年続けて解ったことがあった。海岸ゴミの7割は川から流れ着く。そのうち約2割が生活ゴミだ。うみくり(海岸清掃)だけではなく、まちくり(街清掃)を始めることにした。驚く事に、海岸ゴミと街ゴミはほとんど一緒であった。 街をきれいにする事が、海を守る事に繋がる。
昭和30年代ゴミの集積場所であった夢の島。現在は緑溢れる公園になっている。ここを街の活動拠点として、2006年8月、街をきれいにしようと「夢の島ベアフットフェスティバル」を開催した。

21世紀を迎えて、環境保護の関心は高まってきたが、最大の環境破壊である戦争は続いている。異常気象などの地球温暖化の影響が、日に日に目に見える現象になって日本を襲う。未来を不安に思う子どもたちも増えて来た。 しかし、希望がなければ、変化は訪れない。 「ベアフット協会はポジティブなメッセージを発信したい。」幸矢はそう思った。
環境保護を突き詰めて行くと、平和な世界の実現だ。平和な世界は、花と緑と音楽が溢れるところ。はだしで自由に歩ける安全な海岸は、平和の象徴だ。 現在「花に願いを 歌に想いを」のせて、海岸から街へ、大人から子どもへ、ベアフット協会は、環境保護と平和のメッセージを伝えることに取り組んでいる。
「環境」「子ども」「音楽」をキーワードに活動を続けているベアフット協会。芸術を通じて環境保護・保全の啓発活動を行っている。

2007年2月、NPO法人ベアフット協会設立。

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